2011年9月30日金曜日

愛国的生産:日本は電力不足をどう克服したのか

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朝鮮日報 記事入力 : 2011/09/30 13:41
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2011/09/30/2011093001141.html

GDPを1ドル増やすのに日本の2倍電力を要する韓国
電力の無駄遣いを減らせ
韓国は0.58キロワット時で日本は0.20キロワット時

 京畿道高陽市のある鋳物工場は先日、鉄を溶かす加熱炉を軽油式から電気式に交換した。
 環境汚染を減らし、工場の作業環境改善にもプラスになるということで、政府も交換を後押しした。
 交換前に使った軽油は年間およそ2000キロリットルほどだったが、この工場で使用する1年分の電力を軽油で生産するには、約4700キロリットルが必要だという。
 軽油やガスを燃料とする火力発電所のタービンを回して電力を生産する際、エネルギーのほぼ半分は熱として消滅するからだ。

 このようにエネルギーの非効率的な使用が可能となる理由は、電気料金が生産原価を下回っているからだ。
 韓国の電気料金は生産原価の90%、つまり原価割れとなっている。
 上記の鋳物工場は加熱炉の交換に4億ウォン(約2600万円)以上の費用が掛かったが、軽油式だと燃料代が売り上げの15%を占めていたため、電気料金の安さを考慮すれば、ほぼ5年で元が取れるという。

 このようにいびつな電力需給構造は、産業現場だけでなく家庭や商業施設など、韓国のあらゆる分野で目にする。
 200以上の客室を持つ仁川・永宗島のあるコンドミニアムは、全ての客室にIHクッキングヒーターを入れた。
 関係者は「古いコンドミニアムを買収してリフォームする際、ガスコンロを全てIHに交換した。
 ガスを使うよりも電気にする方が、経費が安くなるからだ」と述べた。

 大規模な総合病院の治療機器や学校の教育機器、工場の機械、埠頭(ふとう)で使用されるコンテナ用クレーン、ビニールハウスや畜舎などの暖房機器も同様で、いずれも電気式に交換されるケースが相次いでいる。
 安い電気料金は国のエネルギー需給構造をいびつなものとし、結局は「国レベルでの電力の無駄遣い」という結果を招いている。

■GDPを1ドル増やすのにOECD平均の1.75倍の電力を使用

 海外と比較しても、韓国の電力消費量の多さは際立っている。
 国内総生産(GDP)を1ドル(約77円)増やすのに必要な電力を見ると、韓国は0.58キロワット時の電力
を使う。
 これは経済協力開発機構(OECD)平均(0.33キロワット時)の1.76倍で、米国(0.3527キロワット時)や英国(0.21キロワット時)に比べ多い。

 これは韓国の産業構造が、製造業、とりわけ化学、鉄鋼、製紙など電力を大量に使う業種が多いのが原因とされてきた。
 しかし韓国と同じような産業構造を持つ日本やドイツと比較すると、産業構造だけが原因でないことが分かる。
 日本はGDPを1ドル増やすのに韓国の半分以下に当たる0.20キロワット時の電力を使う。
 ドイツは同0.28キロワット時で、韓国に比べはるかに少ない。

 韓国での1人当たりの年間電力消費量は9510キロワット時で、韓国よりも経済水準の高いフランス(7894キロワット時)英国(5742キロワット時)に比べ多い。
 2008年には、GDPの規模が韓国の4倍を上回る日本(8110キロワット時)をも上回った。




朝鮮日報 記事入力 : 2011/09/30 13:46
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2011/09/30/2011093001149.html

日本は電力不足をどう克服したのか

電力需要が集中する午後2時前後はコピー機も使わない
家庭ではゴーヤ植え、企業では週末・休日勤務

 「熱帯夜が続いているので、お年寄りがいる家庭ではエアコンをつけた方がいいでしょう」

 8月半ば、日本のテレビ放送では高齢者のいる家庭にエアコン使用を促すキャンペーン放送をしていた。
 日本はこのころ、3月11日の東日本巨大地震の影響で深刻な電力不足に陥り、国家的な危機に直面していた。

 こうした状況でエアコン使用を促す放送が行われたのは、日本国民の「やり過ぎ」を考えてのことだった。
 熱帯夜が続いているのにもかかわらず、冷房装置を全く使用しないために熱中症で病院に運ばれる高齢者が続出したのだ。
 この放送でインタビューを受けたお年寄りは「冷房をつけないのが習慣になっているので…」と話していた。

 福島原子力発電所の事故の影響で、日本は全国の原発54基のうち約40基が稼動を中止するという最悪の状況にあったが、大停電の可能性が高い首都圏では逆に電気が余り、別の地域に電力を供給したほどだった。

 日本政府は、首都圏については前年に比べ15%の節電を目指した.
 が、企業や市民の積極的な参加により目標を上回る21%の節電を達成した。
 大企業や工場では平日に休業し、電力需要が少ない週末・休日に勤務する体制を導入した。
 電気使用量が多い午後2時前後にはコピー機すら使用しなかった。

 停電の危機を乗り越えるのに大きく貢献したのは、一般家庭の自発的な節電だ。
 日本の家庭では電力需要が最も高まる午後2時ごろが電力使用量の30%を占める。
 大地震以降、東京の住宅地では一戸建て住宅の庭やマンションのベランダにゴーヤという植物が次々と植えられた。
 ゴーヤは2‐3カ月で高さ2.5メートルまでつるが伸び、日差しを遮るため室内の温度を下げる「緑のカーテン」となる。
 また、発光ダイオード(LED)電球は売り上げ個数が電球全体の10%にすぎなかったが、大地震後は50%に迫るほど急増した。
 白熱電球よりも値段は約10倍も高いが、電力消費は20%にすぎないからだ。

 日本国民は今、冬の電力不足に備え、湯たんぽやこたつといった省エネ暖房製品を先を争うように購入している。
 湯たんぽは、金属製・ゴム製の入れ物の中にお湯を入れ、足などを温める道具だ。冬でも寝るときに厚い布団の中に入れれば、ストーブやエアコンの暖房モードを使う必要がない。

 こたつは電気あんかが付いたテーブルに布団を掛ける暖房器具だ。
 上着のようになっている「着る毛布」も人気だという。




朝鮮日報 記事入力 : 2011/09/30 11:25
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2011/09/30/2011093000935.html

【コラム】「愛国的生産」行う日本企業

 日本の企業は韓国に比べ2‐3倍高い電気料金や法人税、原子力発電所事故による電力不足で頭が痛いが、その上円高にも見舞われ、悲鳴を上げている。
 円高により、大手メーカーでは営業利益が20%以上減少するとみられているほどだ。
 日本企業は「ライバルの韓国企業はウォン安が輸出の追い風になっている」と不満顔だ。
 日本では複数のメーカーが海外に生産拠点を移していることから、産業空洞化の懸念も高まっている。

 しかし、日本の看板企業は「製造業死守」を続々と宣言している。
 トヨタ自動車の豊田章男社長はこのほど「円高でも300万台の国内生産は維持する」と宣言した。
 国際競争力を維持するためには海外生産の拡大や部品調達の多角化は避けられないが、雇用維持のため全生産台数700万台のうち、300万台は日本で作るというのだ。
 日産自動車も「日本での生産100万台」を維持するため、輸出用の車を主に生産している九州の工場を分社するなど、コスト削減体制を整えている。
 富士通は先日、中国で生産していたパソコンの国内生産を決めた。
 新型多機能ロボットを導入し人件費の割合を下げれば、競争力は十分あるというわけだ。

 研究開発費などコスト削減のため、ライバル企業同士による「呉越同舟」も本格化している。
 日本市場で激しい戦いを繰り広げてきた東芝・日立・ソニーの3社は、中小型液晶パネル生産部門を統合することにした。
 ほかにも、新日本製鉄と住友金属工業が経営統合を推進するなど、企業間の統合が加速している。

 1970‐80年代に世界を制覇した日本企業に陰りが見えている原因の一つに、開発・部品調達・組み立てを日本国内で続けようとする「愛国的生産」がある。
 日本企業による自国中心の生産システムは部品産業を世界で最強に押し上げたが、完成品の競争力をしぼませてしまった。
 研究開発と設計は本社で行い、部品調達と製造は世界で最もコストが安い企業に任せるというやり方で「グローバルアウトソーシング」を実行している米アップル社などとの競争力の差は、時間がたてばたつほど広がっている。

 日本企業がグローバル化に消極的だったのは、日本式資本主義の影響も大きい。
 豊田社長は
 「日本は、顧客・従業員・地域社会などの利害関係者を尊重する『公益資本主義』だ。
 (利益を生むことだけに没頭している)欧米の巨大資本主義に対抗して戦い、勝たなければならない」
と語った。
 外国の多国籍企業は自国の雇用に配慮しないという批判だ。

 日本国民も、品質や価格ではなく国産に対するこだわりで企業の努力に応えた。
 最近やっとアップルやサムスンなどの外国製スマートフォンが日本でも発売されたが、世界市場を席巻した韓国製テレビや自動車を日本でほとんど見掛けないのも「愛国的消費」という日本独特の非関税障壁のせいだろう。

 20年間にわたる不況、
 頻繁な首相交代、
 少子化による国内市場の先細り、
 先進国最悪の公的債務残高
など、数多くの悪材料に囲まれていても、失業率で日本が米国(9%)の半分にすぎない4%台を維持しているのは、愛国的生産と消費が行われているからだ。







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