2011年9月19日月曜日

中国当局のマイクロブログ検閲は実を結ぶのか

_
● 新浪微博(Sina Weibo)


AFP BBnews 2011年09月19日 16:16 発信地:北京/中国

中国当局のマイクロブログ検閲は実を結ぶのか

【9月19日 AFP】世界最大となる4億8500万人のネット人口を持つ中国で、政府がマイクロブログにおける政府批判の芽を摘む動きを強めている。
 だが、専門家らは、当局がネット上の群衆を管理しようとすると困難に直面するだろうと予測している。

 中国政府は、これまでも常にネット検閲を行い、政治的に慎重な取り扱いが必要だと見なしたコンテンツは遮断してきた。

 だが2年前に登場したツイッター(Twitter)に似たマイクロブログサービス「新浪微博(Sina Weibo)」は国民の間で爆発的な人気を獲得し、中国政府が検閲を行う上で大きな問題になっている。

 中国政府が厳しく報道を規制している当局者の汚職やスキャンダル、国内の災害や事故への怒りを「微博」への書き込みで発散する市民が急増しているからだ。

 独自の検閲担当者を抱える企業も多く、ネット上で政府に批判的な書き込みを見つけ次第、削除しているが、検閲担当者の目を逃れた政府批判のコメントが、数時間から数日間にわたってネット上に残ることもある。

■2億人が手にした政府批判のツール

「いまや世論はネット上で形成されていく」
と、北京大学(Peking University)の胡泳(Hu Yong)教授(ジャーナリズム)は指摘する。

 その一例として胡教授は、発展著しい北東の沿岸都市、大連(Dalian)で8月のある日曜日に行われた、化学工場の移転を求める中流階層の人々による大規模なデモをあげた。
 このデモのきっかけは「微博」への書き込みだったという。

 「大連の党幹部がデモ隊の前に姿を現して工場の閉鎖を約束した。
 中国で、このようなことは、めったにないだけに象徴的な出来事だ」(胡教授)

 公式統計によると、「微博」のユーザーは2011年上半期で3倍以上に増えた。
 「微博」を運営する中国ポータルサイト大手「Sina.com(新浪)」も前月、中国最大のマイクロブログ「微博」のユーザーが2億人を超えたと発表している。

■対応を迫られる中国政府

 浙江(Zhejiang)省温州(Wenzhou)で40人の死者を出した7月の高速鉄道事故では、大勢の人々が国を代表する高速鉄道網で安全対策が軽視されたことに対する批判を「微博」に書き込んだ。

 こうした反響の大きさは、当局にとって青天のへきれきだったようだ。
 事故からまもなく、中国共産党の機関紙、人民日報(People's Daily)は、一般大衆とコミュニケーションをとるため政府高官らはもっと「微博」を利用すべきだとの記事を掲載した。

 香港大学(University of Hong Kong)で中国メディアを研究しているデービッド・バンダースキ(David Bandurski)氏は、当局の「微博」監視は、一定の成果を挙げていると話した。
 大連でのデモに関する書き込みも、現在は削除されているという。

 「デモへの明白な言及や画像を検閲することでソーシャルメディアの影響力は明らかに鈍っている」
と言うバンダースキ氏だが、政府から独立した情報源を求めるネットユーザーの欲望が刺激されてしまったいま、政府が
 「瓶からとび出した魔物」
を、再び瓶に閉じ込めることは不可能だと指摘した。



レコードチャイナ 2011-09-26 09:16:30 配信
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=54620&type=1

<コラム・巨象を探る>
ネット情報急拡大で言論チェックは不可能ー中国メディア界に地殻変動

 中国では、インターネット人口が5億人
に達し、携帯電話やスマートフォンのメールを操る人口も6億人以上に膨らむ中、「事実」「真実」はあっという間に伝播する。
 中国公安当局は懸命の情報規制を行っているが、完全にフォローし規制するのは不可能だ。
 さらに近年、中国版ツイッターのミニブログ(新浪微博など)が急速に普及(米ツイッター社、フェイスブックは禁止されている)。
 市民が発信する「ニュース」「情報」が瞬時に駆け巡る。
 ミニブログのユーザーは今年上半期で3倍増の約2億人に達した。

 今年7月の高速鉄道衝突脱線事故では当局が事故の翌日早朝に事故車両を穴に埋めるという異常な行動に出た。
 それがインターネット上や新聞報道で取り上げられたため、あわてて北京中央が動き、温家宝首相自らが乗り出して事態の収拾に乗り出さざるを得なかった。
 以前ならば、警察や人民解放軍を大量動員して、事故現場への立ち入りを封鎖し、闇に葬り去ることもできただろうが、情報が一気に伝播する現代では止めようがない。
 中国各地で起きている公害や汚職への告発も、これらネット情報がきっかけで大きな社会問題に発展。
 当局も「公害工場」の廃止や「汚職」の摘発をせざるをえなくなる事例が続出している。

 「今や中国は世界最大のネット王国
 共産党政府も情報のコントロールは困難」(中国メディア幹部)
という状況で、当局は、これらネット情報が政府批判につながり、北アフリカ・中東の「ジャスミン革命」のような暴動を誘発しないか神経をとがらせている。
 中国当局はネット上の書き込みがきっかけで、著しい格差問題をはじめ、物価高、就職難など国民の不満に火がつくことを懸念。
 5万人ものネット監視員を動員し、24時間態勢でユーザーの書き込み内容、言論を監視・削除している。
 さらには巨額の費用を投じて「グレート・ファイアーウォール」のシステムを構築しているが、約5億人ものインターネットユーザーすべての言動をチェックすることは不可能だ。

 事実、中国共産党幹部はインターネットの影響力が強まっていることについて
 「経済のグローバル化や政治の多極化、技術の進歩がすさまじい勢いで押し寄せている。
 新旧メディアの境界、国内と国際問題の境界がなくなった。
 政治や文化などの問題も境界がなくなっている」
と指摘、メディア管理は「危機に直面している」と率直に述べている。

 既存の伝統的メディアの世界も変化しつつある。
 北京で開かれた日中の有識者会議に出席し、中国の新華社、人民日報、中央電視台(CCTV)から新京報(北京地区最大の民間新聞)、大手ニュースサイトTENCENT などのメディア幹部と「メディアの役割」について討議した。
 中国のメディアは国営通信社・新華社を頂点とした、ヒエラルキーが存在、政府の意向に沿った報道がなされるよう、規制されているが、こうした構造が変化しつつあることを実感した。

 昨年秋の尖閣諸島事件の際、新華社が
 「中国漁船に日本・海上保安庁船が突っ込んだ」
と「図解入り誤報」を配信したことがあったが、他の中国メディアがこのことを明確に批判していた。

 ただ中国の既存メディアには「社会の安定・発展を促すニュース」を選択して報道(当局の意向を忖度)すべきだとの「読者啓蒙論」が強く、「プラス情報マイナス情報すべて報道し、読者の判断に委ねる」との日本メディアの考え方とは異なる。
 「真実・事実とは何か」をめぐって、見解になお大きな隔たりがあるのは否めない。

 中国当局は「情報秩序」の重要性を引き続き強調。
 高速鉄道事故に対する批判的論調が目立った人気新聞「新京報」を共産党宣伝部の管理下に移行するなどの対抗策を講じているが、中国当局がメディアの発信する情報を完全にコントロールできた時代は終えんしつつあると見ていいようだ。

<巨象を探る・その11>
<「巨象を探る」はジャーナリスト・八牧浩行(株式会社Record China社長・主筆)によるコラム記事>






_