『
JB Press 2011.09.10(土)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/21986
史上最悪の大恐慌に向かいつつある世界経済
雇用と需要まで削るIT革命の怖さを知らぬリーダーたち
このところ、毎朝のキスを欠かさなくなった。こう言うと、若い人たちからはダサいオヤジのくせに「キモ~イ」との罵声を浴びせられそうである。
確かに中年のキスシーンは絵にならないかもしれない。
でも、いいじゃないか。
おじさんだって愛するものにキスをしたいんだよ。ちゅ。
■毎朝キスを欠かさなくなった可愛いお相手
とはいえ、相手は残念ながら奥様ではない。
もちろん彼女でもない。
犬?、違います。
猫は飼っていません。
実はお相手は、携帯電話機、アイフォーン(iPhone)なのである。
腕立て伏せをして床に置いたアイフォーンの画面に向かって、ちゅっとやるとアイフォーンが可愛らしく回数を数えてくれるのだ。
画面にはご丁寧に、腕を曲げて、伸ばして、息を吸って、吐いて、とリズムと息遣いが表示されている。
そのリズムに合わせないと回数を数えてくれない。
腹筋も同じで、電話機を持って腹筋すると回数を数えてビート音で教えてくれる。
10回ごとに音が変わって画面を見なくても回数が分かる。
設定した回数の運動が終わると、そのデータは記録されてグラフ表示され、また自動的にツイッターでつぶやいて他人(ライバル)にお知らせして競争心を煽る仕組み。
NTTドコモのiモードは携帯電話機でメールができるなど画期的なものだったが、スマートフォン時代になって、その便利さは格段に向上した。
日々の腹筋や腕立て伏せといったごく初歩的な応用を見るだけでも、ヘルスケア分野での可能性を暗示しているような気がする。
うまく使えば、老齢化している先進国の医療費削減に大きな効果が出てくるのではないだろうか。
腕立て腹筋以外にも、自転車用のアプリケーションもたまに使っているが、たかが携帯電話機のくせに、こちらの期待を裏切る小癪な働きをしてくれる。
出発点からゴールまでの道のりを自動的にグーグルマップ上に表示、1キロごとの平均時速や高低差もグラフ表示する。
■スマートフォンで自分だけの観光ガイドブックを作る
途中で気に入った景色があれば写真を撮っておくと、その写真だけでなく撮った場所と日時がやはりグーグルマップ上に保存される。
これらもまたフェイスブックやツイッターで他人(ライバル)に公開できる。
ただ黙々と自転車を走らせている時に比べてサイクリングの楽しさがはるかに増した。
これはサイクリングではなく観光にも使える。
いつどのように歩いたかが自動的に地図上に記録され、撮った写真も保存され、自分だけの観光ガイド書が出来上がる。
またゴルフ用のアプリでは、自分の立っている場所からピンまでの距離をほぼ正確に教えてくれる。
これまでキャディーさんに頼って数限りなくグリーンオーバーのショットを打ってきた身にはとても有難い。
まさにキャディー要らずである。
日頃どこに行くにもノートパソコンを手放さず、移動中の電車やタクシーの中でも時間があればネットにつなげて仕事をしている身ではありながら、スマートフォン時代になって改めてITの威力を見せつけられた気がする。
「カレログ」という恐ろしいアンドロイド用のアプリでは、恋人の居場所や電源のオンオフ、電池の残量まで把握できてしまうそうだ。私たちは世界で進行しているIT革命の真っ只中にいると言っていい。
■大卒不遇の時代が始まった
それは、生活が便利になる一方で、注意しなければならないのは経済環境や社会システムを大きく変えているということだ。
しかも、中東の民主化運動や中国のジャスミン革命のように誰にでもはっきり見える形がないだけに、対応が後手に回る危険性がある。
その危険性を示唆した記事が英エコノミスト誌にあった。
「高学歴者の苦悩:大学は出たけれど・・・」である。
これまでITを使った自動化の被害に遭ってきたのは主に肉体的な労働を提供する人たちというのが通説だったが、それが間違いだったと言うのだ。
「学歴は給料にも密接に関係している。
専門学位を有する米国人は、生涯を通して360万ドルの収入を手にすることを期待できる。
一方、高卒の資格しか持たない人はたった130万ドルの生涯収入しか期待できない」
「学歴による収入の格差は、拡大しているかもしれない。
2002年に行われた調査では、学士号を持つ人は高卒資格しか持たない人より75%多い生涯収入を期待できることが分かった。
今では上乗せ幅がもっと拡大している」
「だが、過去は将来を知る確かな指針なのだろうか?
あるいは今、仕事と教育の関係が新たな段階に突入しているのではないか?」
■次々と職を奪われていく知識エリートたち
「旧来の構図が変わろうとしており、現在の景気後退による欧米大卒者の需要の落ち込みが構造的なものに変化していくと考えるだけの理由が存在する。
過去数十年間にわたって多くのブルーカラー労働者を震撼させてきた創造的破壊の渦が、知識エリートたちをも揺さぶり始めているのだ」
小学校の時から、いやそれ以前から子供たちに厳しい受験競争を強いて、多額の教育費をかけて少しでも良い大学に入れようと必死の教育ママたちの思惑が音を立てて崩れようとしているというのだ。
「ターボタックス(納税申告用ソフトウエア)がわずかな費用で納税申告書を作成してくれる時に、わざわざ生身の会計士を雇う必要などないだろう。
また、プログラマーが微妙なトーンや言語の曖昧さに対応できるようにしたため、コンピューターがこなせる仕事はますます増えてきた」
「ポール・クルーグマン氏ら何人かのエコノミストは、ポスト工業社会は教養のある人材に対する需要急増ではなく、大規模な「空洞化」に特徴づけられるようになると論じるようになった。
中級の仕事が賢いコンピューターに奪われ、ハイレベルな仕事も伸び悩むと見られるからだ」
そして、教育ママたちが聞いたら卒倒しそうなのが、高い教育を施せば施すほど、国際競争が激しくなって、生き残りが難しいという指摘だ。
■配管工やトラック運転手の方が仕事は安定する
「プリンストン大学のアラン・ブラインダー氏は、これまで大卒者が伝統的にこなしてきた仕事の方がむしろ、給料の低い仕事より海外に流出しやすいと言う。
配管工やトラック運転手の仕事はインドにアウトソースすることはできないが、コンピュータープログラマーの仕事なら可能だからだ」
先進国の先端的な企業では工場や物流などITで合理化できるところはやり尽くした感がある。
そうした企業が次の合理化のターゲットとしているのが知的労働者というわけである。
新しい需要を生み出せない環境下での急速なIT化は、労働市場の破壊者となる危険性がある。
新規需要が見込めない中で、雇用が脅かされ賃金の下方圧力が高まれば経済は停滞を余儀なくされる。
いま欧米や日本で起きている不況の根本原因はここにある。
長い夏休みから帰ってきた英フィナンシャル・タイムズ紙の名コラムニストマーティン・ウルフ氏は、世界経済は大恐慌以来の恐慌が世界を襲い始めたと書いている(高所得国を苦しめる大恐慌以来の「大収縮」)。
「今や世界は、米ワシントンにあるピーターソン国際経済研究所のシニアフェロー、カーメン・ラインハート氏と、ハーバード大学のケネス・ロゴフ教授が呼ぶところの『第2次大収縮』(第1次は1930年代の大恐慌)に入っている。
そこまで終末論的な見方をしない人なら、これを『日本病』と呼ぶかもしれない」
■リーマンショック前の2倍の失業率を続ける米国
「国内総生産(GDP)の急激な落ち込み(GDPの山から谷への減少率は最も小さなフランスでも3.9%、最も大きな日本では9.9%に達した)に見舞われる時には、たとえ景気が拡大しても、GDPが危機前の水準に戻らないうちは景気回復の実感などわかないだろう」
「失業率が高止まりしたり、新規の雇用が少なかったり、余剰生産能力が多いままだったりする時は特にそうだ。
米国ではまだ、失業率が危機前の2倍の水準で推移している」
問題なのは、日本は初めから期待されていないが、世界の政治リーダーがこの恐慌状態と言える状況を十分に認識していないことである。
「米国でもユーロ圏でも、責任者であるはずの政治家たち――米国のバラク・オバマ大統領とドイツのアンゲラ・メルケル首相――は、筆者の同僚フィリップ・スティーブンスが先日のコラムで指摘したように、事態の展開に対して傍観者以上の働きをしているようには見えない。
2人ともよそ者であり、ある程度、よそ者のように行動している」
「米国もユーロ圏も経済成長軌道への速やかな復帰の条件を整えられない――それどころか、どんな条件を整えればよいのかをめぐっても意見が一致せず、前進できずにいる――という認識は、実に恐ろしい」
■過去最悪の大恐慌に陥る危険性がある英国
英国の場合はもっと深刻な状況にある。
マーティン・ウルフ氏は現在の恐慌は過去最悪になる危険性があると別の記事(「英国経済、1930年代をも上回る恐慌に」)で書いている。
「現在の英国の恐慌(ディプレッション)は、少なくとも第1次世界大戦以降では最長となる。
成長率が劇的に上昇しなければ、『大恐慌』を上回るGDPの累積損失を生む可能性も高い。
それだけでも十分に憂慮すべき事態だ」
「過去1世紀で最も長かった恐慌は、1979年6月~1983年6月(マーガレット・サッチャー政権下)の恐慌と1930年1月~1933年12 月(大恐慌)の恐慌だった。
現在の恐慌が過去最長の前例より短くなるためには、2012年4月までに終わっていなければならない」
「だが、その期限まで残すところ8カ月となっても、GDPは起点を4%近く下回っている。
たとえ経済成長率が今すぐ年率4%に跳ね上がったとしても、恐慌が終わるまでにはさらに1年間かかる。
成長率が年間1.5%であれば、恐慌は72カ月間続くことになり、過去1世紀で最も長かった恐慌よりざっと 50%も長くなる」
現在、英国を襲っているこの恐慌の原因は、これまで主原因とされてきた潜在供給力の高さによってもたらされているのではなく、需要の激減によって生み出されていると、ケンブリッジ大学ビジネスリサーチセンターのビル・マーティン氏の論文を引用して述べている。
■需要の減退が原因なのに赤字を恐れて引き締めに走る政府
「失業率の上昇を食い止めつつ、全体的な収益性を許容範囲に収められるほど実質賃金が低下する需要不足の経済では、構造的に弱い経済の特徴でもある低い生産性が表れる可能性がある。
需要不足のために売り上げを増やせないと、産業は低い生産性に甘んじるかもしれず、その状況が持続すると、政策当局者が誤って経済の潜在生産性の低下と解釈することになる」
そしてこの誤った認識が間違った政策へと結びつく時に最大の危機が訪れるという。
「民間部門は債務を返済してバランスシートを改善しようとしている。
政府も今、赤字に怯えて同じことをしようとしている」
恐慌をもたらしている原因は需要の激減にある。
そのことを民間も政府も認識して行動しないと、現在の状況は決して打破できないにもかかわらず、現実の英国の政策は逆を行っているというわけである。
マーティン・ウルフ氏は最後にこう警告する。
「だが、打てる手はほとんどないというのが一般的な見解だ。
そのような破滅の予言には気をつけた方がいい。
そうした予言はいとも簡単に、自ずと現実と化してしまうものだ」
■市場が明確に示す「カネを借りて使え」のサイン
マーティン・ウルフ氏がこうした恐慌状態から脱出するための処方箋を示しているのがこの記事「大収縮への処方箋、カネを借りて使え!」だ。
英国だけでなく米国もドイツも日本も深刻な需要不足に見舞われている。
そこに手をつけなければ始まらない。
「なすべきことは何か。
その答えが知りたければ、市場の声に耳を傾ければいい。
市場はこう言っている。
『どうかカネを借り、それを使ってほしい』」
債券市場の利回りがそれを端的に表している。
「米国の10年債利回りは9月5日に1.98%となり、60年ぶりの低水準を記録した。
ドイツ国債の利回りは1.85%。英国でさえ2.5%の金利で資金を借りられる」
「各国の国債利回りは急速に日本の水準に近づいている。
信じがたいことに、物価連動債の利回りは、米国がほぼゼロ、ドイツが0.12%、英国が0.27%となっている」
■政府の財政赤字は民間の借金返済が主要因
ところが、各国のリーダーがそうした市場の声を完全に無視しているとマーティン・ウルフ氏は言う。
「しかし市場の魔法を信奉していると公言している人々が、誰よりも頑なに市場の叫びを無視している。
財政が破綻しそうになっているのだと彼らは主張する」
各国の財政が赤字を膨らませてきたのは、例えば米国がリーマンショック後に積極果敢な財政出動をさせたせいというよりは、民間部門がせっせと借金を返してきたためだと言う。
「現在の巨大な財政赤字は、特に深刻な金融危機が生じた国では、計画的なケインズ流の財政刺激策により生じたものではない。
米国でさえ、的外れで不十分な景気刺激策の規模は国内総生産(GDP)の6%足らずで、3年間の累積赤字のせいぜい5分の1だ」
いま世界各国に必要なのは、需要を喚起することであって財政赤字を減らすことではないと言う。
もし、そんな政策を続ければ、危機の迫った欧州を皮切りに世界経済はとんでもない収縮に向かうと見る。
■世界の日本化を揶揄されても懲りない日本政府と日銀
「日本は、バランスシート不況に陥っているさなかに早計に財政を引き締めるという失敗を犯した。
今、先進諸国が同じ失敗を、もっと危険で、はるかに世界的な規模で繰り返そうとしているということが明白になりつつある」
もはや世界経済の日本化は世界の共通認識になったかのようである。
そして、その日本は懲りることはなかった。
日銀は9月7日の政策決定会合で追加の金融緩和を見送り、同じ日に政府は野田佳彦政権になって初の政府税制調査会を開き復興増税の検討に入った。
数十兆円規模の国債を発行して復興財源にあて、それを日銀に全量買い取らせ円安誘導させるという方法もあると思うが、物価の番人に徹している日銀の白川方明総裁にそのような考えは全くないようだ。
そうなると打てる手は限られてくる。
英FT紙は
「円高を甘受することを学び始めた日本」
で、
「スイスは通貨高に抵抗する動機と手段を持っているが、日本は円高を甘受することを学びつつある」
と書いている。
日銀にすれば、今は動く時ではないという判断だろう。
そして円高は内需を促す作用があるから、恐らくそのメリットを徹底活用して経済の窒息状況から立ち直ろうという政策と理解できる。
I
■T革命は自立分散型の組織で利用せよ
その場合、どのように内需を拡大させるかの戦略が正否のカギを握る。
需要を減退させている原因は、団塊世代の引退というような人口動態による要因もあるが、IT革命が浸透する中で構造的に需要が失われていることにも着目する必要がある。
IT化の波に抗うことはできない。
だとすれば、その構造を逆手に取ってITを最大限に利用しながら需要を拡大させなければならない。
実はITには面白い性質がある。
大企業のようなピラミッド組織でIT化が進むと、効率がどんどん良くなって非雇用圧力が高まる。
しかし、中小企業同士が連携するようなケースを考えると、それまでなかった発想が生まれ新しいニーズを生み出す。
進みすぎた東京一極集中から脱し豊かで特色のある地方を作るという日本が抱えている大きな課題に異論を唱える人は少ないと思う。
中央集権的な日本の構造を地方分権に変えた時、IT化は需要創造という意味で強い武器となる。
自立分散型のシステムと相性が良いのである。
消費地と産地が結びついて、消費者の声が産地にきめ細かく届くことで今までの農業の形が大きく変わるかもしれない。
北海道と九州の中小企業が連携して新しいビジネスが始まるかもしれない。
■日本の成長を阻止する中央官庁のエゴ
それらはすでに起こっていることでもある。
しかし、それらを小さな試みにとどめず日本全体が大きく変わるには、日本の仕組みを徹底した地方分権にしなければならない。
規制緩和も徹底させる必要がある。
中途半端では十分な需要創造はできない。
その意味で、元佐賀市長の木下敏之さんが「分権改革が後回しはやむなし、野田政権は霞が関の活用で経済成長を」で指摘していることは重要である。
「『九州農政局』や『近畿通産局』などの名称で、国土交通省の出先機関や農林水産省、厚生労働省など各省庁の出先機関が設置されていますが、地方自治体の願いは国の出先機関の権限を移してほしいということです」
「これらの国の出先機関の権限をまずは都道府県に移してもらえると地方自治体にとってはとてもありがたいのですが、国にとっては、余った職員をどうするのかという問題が生じますし、そもそも国の職員は自らの権限を減らすことは大反対です」
しかし、お役人の権限を守ることで日本が沈没してしまったら元も子もない。
木下さんは、野田政権には菅直人首相の対立構造を捨ててまずお役人に仕事をしてもらうべきだと言う。
それはその通りだが、やはり中央集権的な構造を変えないと本格的な景気浮揚にはつながらない。
■日本の大手メディアに日本を語る資格なし
日本は目に見えないIT革命に加えて目に見えない放射能汚染の中にいる。
外国人観光客は激減、おいしいと評判だった日本の農産物は海外に全く売れなくなっている。
こうした環境の中で、日本の需要を高めるのは至難の技だからである。
世界に例がない東京一極集中の巨大メディアへの優遇なども早期に解消する必要がある。
「知事も町長もどっぷり、玄海原発を巡る黒いカネ」
の記事でも明らかにされているが、
記者クラブにどっぷり漬かった大手メディアに日本の構造改革を促す力はない。
個別の記事に噛みついて恐縮だが、9月7日付けの朝日新聞の社説「高速道路政策 無料化の前に検証を」は、不思議な論考だった。
東京中心の発想が見え見えである。
震災復興に向けて、国土交通省が東北地方の高速道路を無料化することに反対しているのだが、その理由として、渋滞や鉄道・フェリーの乗客減などを挙げている。
しかし、渋滞が生じるということは、そこに需要があるということである。
企業だったら需要を抑えるために高い料金を設定するようなことはせず、さらに需要が増えるような戦略を考えるのではないか。
また、鉄道とは主にJRのことだと思うが、JRは民営化されて地方のローカル線を次々と廃止し、収益の向上に努めてきた。
そうした企業の収益を守るために、地方の利便性を犠牲にせよというのは、朝日新聞らしくない考え方ではないか。
いずれにしても地方の活性化に日本の未来がかかっているという認識を日本の国民一人ひとりが持つことが大切ではないかと思う。
大胆な金融緩和や財政出動ができないなら、大胆な構造改革しかこの難局は乗り切れない。
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ロイター 2011年 09月 15日 14:42
欧州債務危機が大恐慌引き起こす恐れ=ソロス氏
[15日 ロイター] 著名投資家のジョージ・ソロス氏は、ユーロ圏首脳が欧州の債務危機解決に向けて「欧州財務省」の創設を含む抜本的な措置を講じない限り、債務危機が大恐慌を引き起こす恐れがあると警告した。
ソロス氏は、ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックスとロイター・ドットコムに寄稿し、政策当局者はギリシャ、ポルトガル、そしておそらくアイルランドがデフォルト(債務不履行)に陥り、ユーロ圏離脱に追い込まれる可能性に備えなければならないと指摘。
「たとえ破滅を回避できたとしても、赤字削減の必要性がユーロ圏を長期的なリセッション(景気後退)に導くことは間違いない。
それは計り知れない政治的結末をもたらすだろう」
と述べた。
ソロス氏はそのうえで、
1)弱小国家の銀行破たんを防ぐため、銀行預金を保護する必要がある、
2)デフォルトした国の経済を支えるため、一部の銀行の機能を維持する必要がある、
3)欧州の銀行システムの資本再編を実施し、国家でなく「欧州」の監督下に置く、
4)赤字を抱えた他の国の政府債を保護する必要がある
──とする4つの大胆な政策措置を提言。
「それらはすべてコストがかかるが、課税権限を持ち、借り入れもできる『欧州財務省』を創設する以外に選択肢はない」
と述べた。
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