2011年9月4日日曜日
中国:報道統制へ
● 発行者の欄が「中共北京市委宣伝部」と変更された「新京報」(中央)=北京市で2011年9月3日
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毎日新聞 2011年9月4日 東京朝刊
http://mainichi.jp/select/world/news/20110904ddm007030113000c.html
中国:北京2紙、共産党北京市委員会宣伝部管理下に
高速鉄道事故、原因追究の報道
【北京・工藤哲】中国各地の社会問題を独自の視点で報道してきた、北京の有力紙「新京報」と「京華時報」は2日から共産党北京市委員会宣伝部の管理下に置かれた。
両紙が3日付で伝えた。
両紙は官製メディアとは異なる「都市報」に分類されるが、都市報が当局の直接管理下に置かれるのは極めて異例。
両紙は、7月の浙江省温州市の高速鉄道事故で当局の意向に反し、事故原因を徹底追究する報道ぶりなどで知られていた。
露骨な報道統制とも言え、両紙が当局に批判的な報道ができなくなるのは確実だ。
「新京報」は3日付の紙面で、2ページ目の発行者の欄が、報道内容を管理する「中共北京市委宣伝部」となり、これまでの光明日報、南方日報のメディアグループ名が消えた。
「京華時報」も1面の題字横から「人民日報社」が消え、宣伝部名に変わった。
中国メディアによると、両紙とも発行部数は約80万。
報道などによると、「新京報」は03年創刊。
北京紙「光明日報」と、調査報道で知られる「南方都市報」などを発行する広東省のメディアグループ、南方日報報業グループが北京進出のため協力し、共同発行してきた。
01年創刊の「京華時報」は、共産党機関紙「人民日報」を発行する人民日報社(北京市)が発行してきた。
北京市の担当者は、市が発行を直接管理する理由について、
「競争が激しくなり、新聞発行の構造を調整する必要があるため、資金や技術、人事面で影響力を強める」
ことに加え、
「世論を正確な方向に導くため」
としている。
◇「情報統制」強化か
「新京報」や「京華時報」は、独自報道に加え娯楽やスポーツなども充実し、市民に親しまれてきた。
読者も多く、比較的自由な報道が認められていた。
「新京報」は高速鉄道事故の発生直後、多い時で10ページ以上を割き事故を詳報。
8月には
「政府は突発事件の情報公開の早さで微博(ミニブログ)に学ぶ必要がある」
とする学者の論評を掲載し、「微博」の役割を擁護する論調を貫いた。
「京華時報」も信号システムのトラブルが数年前に別の場所で起きていたことを独自調査で伝えた。
中国当局は、微博にはうわさやデマが含まれており、利用者を混乱させると官製メディアを通じて懸念を示しており、微博の利用やそれを支持するメディアへのさらなる規制強化を検討している可能性もある。
一方、微博上では、発行者の名称の変更前後の紙面が掲載され、「一つの歴史が終わった」などと惜しむ声が書き込まれた。
「新京報」関係者は、
「2日午後に北京市委宣伝部の人間が社にやってきて、宣伝部の管理下に変更され、新たな都市報グループが作られる旨を伝えられた。
たまらない」
「新京報はずっと新京報だ」
などと悔しさをつづっている。
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■ことば
◇都市報
胡錦濤国家主席ら中国指導部の動静などを伝える党機関紙「人民日報」といった官製紙や、経済が中心の経済紙とは異なり、事件や芸能、娯楽、スポーツ情報や広告を多く掲載する大衆紙の総称。
改革・開放政策で90年代から見られるようになった。都市部の街頭スタンドで最も広く販売されている。
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